たぶん動く...

多分GIS系の人。あくまで個人的見解であり、所属団体を代表するものではありません。

ウクライナ情勢とGIS

最近のウクライナ情勢については、ニュース等で皆さんご存知かと思います。 また、ロシア陣営、ウクライナ陣営双方がインターネット上の情報戦を繰り広げていることも報じられています。 今回は、一般人がGIS、空間情報、衛星リモートセンシングを利用してウクライナ情勢を解析している事例を紹介したいと思います。

GISと現代の情報戦

GISは元をたどると、測量、航法誘導といった分野に繫がります。また人工衛星偵察機で敵国の基地を撮影し活動を分析する活動は古くから行われています。 現代では、写真1枚からインターネット上の情報を駆使して、撮影場所(ときには時刻)を特定したりする技術が存在します。 前者はIMINT(画像諜報)、後者はOSINT(オープンインテリジェンス)と呼ばれています。 また、最近ではGISを分析することをGOINTと呼ぶこともあるようです。

事例紹介

ウクライナ情勢で分析をした事例をツイッターを中心に紹介していきたいと思います。
ここで紹介する事例は全て無料で入手できる情報を元に分析した事例になります。
他に事例があれば随時追加していきます。

Mi-24ハイントの撃墜場所特定

ウクライナが公表したロシア軍のMi-24ハイント攻撃ヘリコプターが撃墜される動画

動画が公開された約二時間後動画を撮影された場所を特定した人が現れました。

ロシア軍のキエフ侵攻を遅らせているとされる北部の沼地の分析

SAR画像による比較

ロシア軍の車列

3月上旬頃、ニュースで報じられていた停滞しているロシア軍の車列は、Sentinel-1のSAR画像でも見れました。
Google Earth Engineを用いて解析したようです。

ウクライナ西部チェルニーヒフの火災

Landsat9の短波長赤外の画像の解析になります。本来は森林火災の検出に用いられる短波長赤外画像だが火災を検出することもあります。
市街地で火災が見られる->攻撃を受けていると考えられそうです。

マリウポリの火災

雲の影で本来は黒くなるはずの場所に赤い斑点が見られる。火災と推定しています。

ヨーロッパ周辺のレーダー波

SAR画像では軍用レーダの干渉が発生することがあります。ロシア軍によるポーランド国境付近の街への攻撃やウクライナ沖封鎖により、東欧地域のレーダー波の干渉が増えているそうです。
www.bellingcat.com

ウクライナ軍がロシア軍を攻撃した地点の特定

まとめ

このように、無料で入手できる動画や、衛星画像からウクライナ情勢を分析する事例を紹介しました。各国の情報機関も偵察衛星等で同じように解析しているものと思われます。
ウクライナ情勢については、ツイッターRedditを覗くとまだまだ独自に解析している人がたくさんいます。しかもロシア軍のウクライナ侵攻が始まる数ヶ月前から。
今回のウクライナ情勢に関する分析で特筆すべきことは、多くの人が同じエリアを長期間(数ヶ月)に渡り分析していることです。 このような自体はあまりなかったように思います。
皆さんにもGISを知ってもらうきっかけになればと思います。