最近のウクライナ情勢については、ニュース等で皆さんご存知かと思います。 また、ロシア陣営、ウクライナ陣営双方がインターネット上の情報戦を繰り広げていることも報じられています。 今回は、一般人がGIS、空間情報、衛星リモートセンシングを利用してウクライナ情勢を解析している事例を紹介したいと思います。
GISと現代の情報戦
GISは元をたどると、測量、航法誘導といった分野に繫がります。また人工衛星や偵察機で敵国の基地を撮影し活動を分析する活動は古くから行われています。 現代では、写真1枚からインターネット上の情報を駆使して、撮影場所(ときには時刻)を特定したりする技術が存在します。 前者はIMINT(画像諜報)、後者はOSINT(オープンインテリジェンス)と呼ばれています。 また、最近ではGISを分析することをGOINTと呼ぶこともあるようです。
事例紹介
ウクライナ情勢で分析をした事例をツイッターを中心に紹介していきたいと思います。
ここで紹介する事例は全て無料で入手できる情報を元に分析した事例になります。
他に事例があれば随時追加していきます。
Mi-24ハイントの撃墜場所特定
ウクライナが公表したロシア軍のMi-24ハイント攻撃ヘリコプターが撃墜される動画
Video showing the moment when a Russian helicopter (probably a Mi-24/35) got shot down by Ukrainian forces.
— MrRevinsky (@Kyruer) 2022年3月5日
Uknown location.
[Id via @ShabanianAram]. pic.twitter.com/KouKGU5loy
動画が公開された約二時間後動画を撮影された場所を特定した人が現れました。
Evidence for geolocation // 50.758838, 30.366019 pic.twitter.com/LXgvWIuQVv
— Edoh 🗺️ (@zwedowz) 2022年3月5日
ロシア軍のキエフ侵攻を遅らせているとされる北部の沼地の分析
SAR画像による比較
Flooding seen on the Sentinel-1 satellite images as well around the town of Demydiv #Ukraine https://t.co/Ksa2W0rLjK pic.twitter.com/MRjBQd6zMQ
— AI6YR (@ai6yrham) 2022年3月9日
ロシア軍の車列
3月上旬頃、ニュースで報じられていた停滞しているロシア軍の車列は、Sentinel-1のSAR画像でも見れました。
Google Earth Engineを用いて解析したようです。
An app to track the Russian convoy build-up north of Kyiv using Sentinel-1 satellite 🛰️ data is now available here: https://t.co/FUEUkfywdg
— corey scher (@coreymaps) 2022年3月1日
You can measure distance(s) interactively and it will automatically update as new images come online.#Ukraine #GEOINT #EarthEngine https://t.co/34JCBdhL6Q pic.twitter.com/pL9XUgn2KX
ウクライナ西部チェルニーヒフの火災
Landsat9の短波長赤外の画像の解析になります。本来は森林火災の検出に用いられる短波長赤外画像だが火災を検出することもあります。
市街地で火災が見られる->攻撃を受けていると考えられそうです。
Latest night #Landsat short-wave infrared spectral imagery (March 6, Local Time 21:22) around Chernihiv and Desna river #Ukraine. Active fires and other hot thermal spots (burning material/explosions etc) show the focus of fighting has migrated to the south 1/2 pic.twitter.com/kzGx2GYhU2
— Sotiris Valkaniotis (@SotisValkan) 2022年3月7日
マリウポリの火災
雲の影で本来は黒くなるはずの場所に赤い斑点が見られる。火災と推定しています。
The last imagery I was able to get from the Sentinel-2 satellite showing Mariupol was covered in spotty clouds. What I WAS able to see of the city, however, was disturbing. Isolated areas burning in this one image alone. https://t.co/QDU5tuJR3B pic.twitter.com/fECXCNlTNz
— Aram Shabanian (@ShabanianAram) 2022年3月12日
ヨーロッパ周辺のレーダー波
SAR画像では軍用レーダの干渉が発生することがあります。ロシア軍によるポーランド国境付近の街への攻撃やウクライナ沖封鎖により、東欧地域のレーダー波の干渉が増えているそうです。
www.bellingcat.com
Polen hat mal das Radar angeworfen. 📡 pic.twitter.com/Vd0eUqzbCZ
— Rationalgarde 💉💉💉 (@HerrReneGarde) 2022年3月14日
ウクライナ軍がロシア軍を攻撃した地点の特定
TB2 strike in Kherson again
— Hamid (@khalfaguliyev) 2022年3月14日
Geolocationhttps://t.co/Um7ykGfKlb https://t.co/qoOGrugff9 pic.twitter.com/aapi0hvMBi
まとめ
このように、無料で入手できる動画や、衛星画像からウクライナ情勢を分析する事例を紹介しました。各国の情報機関も偵察衛星等で同じように解析しているものと思われます。
ウクライナ情勢については、ツイッターやRedditを覗くとまだまだ独自に解析している人がたくさんいます。しかもロシア軍のウクライナ侵攻が始まる数ヶ月前から。
今回のウクライナ情勢に関する分析で特筆すべきことは、多くの人が同じエリアを長期間(数ヶ月)に渡り分析していることです。 このような自体はあまりなかったように思います。
皆さんにもGISを知ってもらうきっかけになればと思います。